- 2005年8月27日 23:37
- 歌舞伎
コクーン歌舞伎でお馴染み、串田和美氏の演出による『法界坊(ほうかいぼう)』。御丁寧に「串田劇場(くしだワールド)」と注釈が付いている通り、もとは平成中村座で串田氏が演出を手がけて評判となった一作だ。
『法界坊』はもともとが破天荒な破戒坊主で、こいつが吉田家の御家騒動に利用されて暗躍するうちにどんどん破戒の度が進み、かどわかしや人殺しをした挙げ句に殺されて、それを恨みに悪霊となる。しかも自分が殺したお姫様に想い人を逆恨みさせて、その怨霊と一体化してしまうんだからとんでもない。その人間性の崩れ方は、串田氏自らが制作した「法界坊人形」によく現れている。このポスターにも出演した人形は、今月はずっと歌舞伎座二階にガラスケース入りで展示されており、何故だかお賽銭があげてあった。あんな破戒坊主に賽銭やってどうすんだい。
さて、肝心の芝居はどうだったか…。
『今昔桃太郎』『野田版鼠小僧』『研辰討』『法界坊』。12月から8月までの短い間に4つの現代の演出家、作家による”勘三郎好み”ともいうべき作品を観てしまったので、ちょっと食傷。1−2年に1作こういうのがある分には面白いんだけど、やりすぎるとねぇ…というのがよーくわかった。歌舞伎座にせよ国立劇場にせよ、毎月のように歌舞伎を観に足を運んでいて飽きないのは、いろんな作品をいろんな解釈や型でいろんな役者で楽しめるのがいいわけで、襲名興行の演目はバラエティに富んでいたから良かったけど、納涼歌舞伎でまでやらなくってもいいじゃない?勘三郎丈としては串田氏に歌舞伎座を体験してもらいたかったんだろうけれども、はっきり言って現在の彼の人気では、歌舞伎座でやっても来る人のほとんどは中村屋おっかけばかり。その数はとんでもなくいるだろうからチケットは売れているけど、客席のノリが異様で…楽日でもないのにカーテンコールしちゃうしね。くわっと見栄を切って終わった芝居の直後に、怨霊と武士と捕り手がにこにこと並んで手を振っていたのでは、余韻も何もあったもんじゃない。
実のところ、芝居そのものはかなり楽しんで観てたんだけど、主に、最後にスタンディングオベーションしてくれてしまった中村屋おっかけの観客の皆さんのせいでしらーっと気持ちが醒めてしまった感じ。三階席で立たれると、後ろの人は何も見えなくなるんだけど、そういうことは気にしてないようだし。咄嗟に立てない人もいるのよ?歌舞伎座は終演時間が遅いから、少しでも早く席を立ちたい人だっているし。そういう観客同士の思いやりの無さが歌舞伎座をも浸食してしまうとは、恐るべきは「人気」という魔物なのかなあ。