- 2006年2月11日 23:34
- 歌舞伎
今月は久しぶりに静かな歌舞伎。誰の襲名もないし、追善もないし、安心して観ていられると言っては失礼か。それではつまらないという声も聞こえて来そうだが、あんまり毎月イベントものが続くと飽きるのだよ。
『梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)』。
幸四郎で観たのは初めてだが、台詞が聞き取りにくかった。他が口跡の明瞭な人ばかりだったので際立ってそう聞こえたのかもしれない。全体の流れも各お役の存在感も文句なしなのにもったいない。以前に観た時にも呑助は秀調だったが、もっとコミカルだったような…気のせいか?今日は哀しげな感じに演じられていた。
今月の眼目はなんと言っても『京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)』。白拍子花子の陰と陽を二人で踊り分けるという凝った作品だ。二年前に玉三郎が企画して菊之助と踊り好評だったものの再演だが、美しいことこの上ない。菊之助がいくら若手の中では飛び抜けて踊れるとは言え、玉三郎と絡むのはどうなのだろうと思っていたが杞憂であった。時に青白い炎のように、あるいは氷のように踊る玉三郎の硬質な美しさと、春の日溜まりのような菊之助の柔らかさが融合した舞台は、一瞬たりとも気を逸らす隙のない、良い意味での緊張感に溢れていた。眠気の忍び寄る暇もない。終わった後の客席は、良い舞台を観た後の華やいだ満足感に包まれていた。
最後は『人情噺小判一両(にんじょうばなしこばんいちりょう)』。菊五郎と吉右衛門は、うまい。話自体は実話をベースにしたそうだが、出来過ぎと言いたくなる筋だ。そんな風に見えてしまうことなく、人々の価値観の違いがもたらす悲劇を理屈っぽくなく見せられるのは、脚本だけでなく役者の力があってこそだろう。うまいなあと唸らされた一本であった。
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