- 2008年11月24日 23:02
- 歌舞伎
国立劇場『江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)』、サブタイトルは「明智小五郎と人間豹」。ずばり、江戸川乱歩の『人間豹』だ。もともとは市川染五郎が10年位前からやりたいと言っていた企画だそうで、国立劇場の新作歌舞伎脚本に入賞歴のある岩豪友樹子が江戸時代に舞台を移して脚色し、九代琴松(松本幸四郎)が演出して、この度めでたく国立劇場で板に載ったわけである。興味本位に見に行ったが、これが案外面白かった。
今日を含めて興行日はあと3日を残すのみだから、ここまでにかなり練られた舞台になっているだろうとは思う。しかし大筋は変わってないはずで、それを思うと脚色の段階で随分と工夫を凝らしたものだ。明智小五郎が語り過ぎなきらいはあるが、全体としてテンポもよく、見せ場も多く、息をつく暇もないくらい。音楽も、新作歌舞伎にありがちな西洋楽器を取り入れたものではなくて下座音楽をしっかりと活かしていて効果的。特に幕開きの常ならぬオドロな太鼓は良かった。人間豹がワイヤーワークで飛んじゃうのは面白い。スーパー歌舞伎かいって感じだが、役の造形からはそれもありだろう。
松本幸四郎が明智小五郎で、普段は菊人形を作っている職人で隠密同心らしいのだが、風格がありすぎて偉そうに見えちゃうのがちょっと残念。染五郎の二役は極端な役柄だから、見た目だけで全然違っててるので演じ分けはわかりやすい。人間豹が神谷に化けてお文に迫り、正体を現して爪を立てるところもちゃんと神谷と人間豹が違うように演じられていて良かった。春猿の三役が好演。顔が似ている町娘、女役者、明智の妻をくっきりと演じ分けている。生真面目な小林新八と不幸な蛇娘のお玉を演じ分けた高麗蔵も見事だった。沢村鐵之助の百御前、松本錦吾の目明かし恒吉も役にはまっていて良い。奇をてらわず(もともとの作品がぶっ飛んでるので十分新奇ではあったが)素直に歌舞伎として脚色演出したのが成功の素か?次の試みに期待したい。
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