- 2009年11月22日 23:30
- 歌舞伎
顔見世興行は『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』を昼夜通しで公演。これを一日で見るのは体力がいるなあといつも思うのだが、これまでは頑張ってそうしていた。でも今年はすごく無理な気がして、かなり考えた。最終的に、通しでチケットを確保して、「大序」と「三段目」を見ないという方策を取ってみた。鮒侍のところを見られないのは残念だが仕方ない。
というわけで、昼の部は「四段目 扇ヶ谷塩冶判官切腹の場 同表門城明渡しの場」からを観劇。塩冶判官は勘三郎、力弥が孝太郎、石堂右馬之丞が仁左衛門、薬師寺次郎左衛門が段四郎、斧九太夫が錦吾、由良之助が幸四郎、顔世御前は魁春。顔見世に相応しいオールスターキャストだ。ここから見ただけでも十分に緊迫感があって楽しめた。特に魁春、錦吾の若々しさ、孝太郎の初々しさが際立っていた。勘三郎の判官は去年の平成中村座より良かった。由良之助が城から徐々に離れていく時の舞台の工夫は、ここでの見所の一つだが、今回は表門が斜めに引っ込んでいく趣向となっていて、これがまた良かった。歌舞伎座の舞台は奥行きがあるからこそなのだろうが、遠ざかる城を振り返る由良之助の万感の思いがよく伝わった。
「浄瑠璃 道行旅路の花聟」は勘平が菊五郎、お軽が時蔵。安心して見ていられる組み合わせなのだが、この踊り、どうしても「吉野山」と被っている印象が拭えない...いや、きれいだったが。
一休みの後、夜の部は「五段目 山崎街道鉄砲渡しの場 同二つ玉の場」からだ。勘平は引き続き菊五郎、千崎弥五郎が権十郎、斧定九郎は梅玉。梅玉がちゃんと「水も滴るいい男」に見えるとこがすごい。そのまま「六段目 与市兵衛内勘平腹切の場」で、お軽は時蔵、おかやが東蔵、お才が芝翫、源六が左團次、不破数右衛門が段四郎。ここでの段四郎、薬師寺とは180度違った不破を余裕の名演。かっこいい。菊五郎の勘平は、若気の至りの悲劇を余すことなく伝えて美しい。うーん、お腹いっぱいになってきた。
「七段目 祇園一力茶屋の場」は由良之助が仁左衛門、お軽は福助、寺岡平右衛門が幸四郎、力弥が門之助、斧九太夫は引き続き錦吾、鷺坂伴内が松之助。仁左衛門の由良之助は平成中村座でも見ていて、それがすごく良かった印象があるだけに今回は「こんなもん?」て感じがしてしまった。悪いわけじゃないんだけど、普通。福助のお軽は平右衛門との絡みが、兄を振り回す可愛い妹の甘えがよく出てて良かった。しかし平右衛門は幸四郎ではちょっと重いというか、貫禄があり過ぎな気がしてしまった。こうして振り返ると、去年の平成中村座のは、すごくバランス良かったなあ。
最後は「十一段目」で討入りから引揚げまで。ここで特筆すべきは引揚げの時の舞台美術だ。橋の向こうから四十七士が引き上げてくるのだが、舞台中央に大きく作られた橋を向こうから上って下りて、梅玉の服部逸郎に声をかけられた後、しばらく橋の上にずらっと並んでいるのが見栄えとしても演出としても秀逸だった。そして順番に橋を下りて道を変えて花道を引き上げる一行...なんとも心憎いばかりの演出。歌舞伎座の舞台、という大きな空間を存分に使った巧さだ。そして幕。やはりいい芝居だなあ。
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